福田教授の総回診【第18回】2018 FIFA WORLD CUP に思う

ワールドカップロシア大会は、予選からオランダ・イタリアが姿を消し、本戦ではドイツが韓国に敗れ、予選リーグ敗退した。16強でもアルゼンチンが敗退・・・。勤勉に全員が動き、チームのために汗がかけるチームが、国のサッカー協会のバックアップで勝ち上がっている印象を強く受けた。世界のスーパースターはいずれもPKを外す。
データ分析の精度は一般のサッカーファンの想像をはるかに超えるレベルであろう。相手チームのストロングポイントが明確であればあるほど分析と戦術で封じ込められている。戦前から個の抜きんでているストライカーのいる、アルゼンチン・ブラジル・ポルトガル・ポーランドは封じ込められるべくして敗退していった感がある。

雑感になるが、巨額なマネーを所属クラブから受け取っているスーパースターの機嫌を損ねないようなチーム戦術には悲しみというか、やるせなさというか・・。チームメイトたちもやりづらさを感じているはずである。
上記のようなチームの監督はさぞかし大変だったであろう。日本サッカー協会はかなり前から「資金力・経済力・科学技術」を駆使して、世界のナショナルチームやクラブチーム、そしてスーパースターの分析を行っているのであろう。
要望が発せられ、映像さえ入手できれば、ありとあらゆるテーマでフォーカスされたデータが分析できる技術力がある。

☆選手の気質とファールでの精神状態・リードされているときの精神状態の特徴

☆使用硬式球の回転と変化の関係

☆各選手の運動量やTOPスピード⇒ストロング・ウィークネスの分析

☆各選手のボールの置き所の確率・統計からの傾向と対策

☆攻守の切り替えでさぼる中盤の選手のリストアップ

☆相手のビルドアップ時の傾向と狙い

☆レフェリーの性格や抗議に対する態度・カードを出す頻度

勝利のために、分析グループやモチベーションビデオをつくるスタッフの力が大きいかは「推して知るべし」である。リアルタイムで世界のサッカーが映像で手に入る時代だからこそ出来ることであり、そして比較できるという点において、日本人プレーヤーがヨーロッパで活躍していることも映像の入手や分析を実用的なものしている。
各選手も自分のありとあらゆる面を分析・解析し、その方面のプロによる協力をもらって自らの商品的価値を高める時代になっている。より高度な世界ですね。

今に始まったことではないが、ワールドカップは計り知れない経済効果や報奨金などのマネーがうごめく4年に1度の経済的イベントである。国のサッカー協会はそこを無視できないし、無視すべきでもないだろう。
TV局などのメディアやADIDAS・KIRINなどのスポンサーの圧力も当然ある。今回の監督交代劇は色々なサッカー協会の判断から行われたことであるはずで、我々がとやかくいうレベルにはない。ワールドカップならではの複雑な世界なのでである。
今後は、色々なデータや戦術を金で売る企業が現れ、それを母国のサッカー協会が金で買う時代へと変化していくであろう。もしかするとAmazonのジェフベソスやMicrosoftのビルゲイツのような大富豪になれるサッカー分析企業が現れるかもしれない。ゴール判定システムだけではなく審判ロボットや侮辱的態度・発言を判定する読唇機なども駆使されるであろう。

驚異的なマネーがうごめくその中心、FIFAはフットボールマフィアになりうる。いやもはや完全になっているのかもしれない。VARなど含め、前述のような色々な取り組みの導入にはかならす利権があるのだから。スキャンダル報道がすぐそこにある気がする。まあでもサッカーを純粋に楽しめるならいいやとも思ってしまう。

南米やアフリカチームでいえば、ウルグアイ以外は全く活躍できなかった。完全に科学技術とマネーの力であると断言できる。逆に言えば、破格の金を動かせればサッカー無名国があるエージェントの力を借りて有力若手選手を発掘し、国籍をも動かして代表チームをつくる可能性もありそうである。「ウイイレ」状態である。世界中が熱狂するワールドカップは、巨額マネーゲームの道具となりうるのである。

国内では、Jリーグはもちろんだが、プレミアに所属するような高校サッカー部も、権謀術数の渦巻く経済社会に突入するのは時間の問題である。プロ選手の卵を抱えるチームは、働き方改革や部活動時間の見直しなどとは「ねじれ」た異次元の取り組みに巻き込まれていく。
2020オリンピック・2022ワールドカップ。日本からもエムバペのような選手が現れないか期待しちゃいますね。フィジカルあってのサッカーですから、ハリルさんの攻撃陣選出は基本的には正しかったはずだし、DUELという言葉には私も共感しています。
大迫選手・原口選手・宇佐美選手・乾選手などすごい速いですよ。そこに香川選手・柴崎選手のような高い技術を要している選手の中盤、運動量の長友・酒井・デカツヨの昌子選手・吉田選手、そしてすべてのコンダクター長谷部選手などなど、とにかく今回の代表は素晴らしかったですね。

1億以上人口がいて、サッカー人口も欧州並みかそれ以上になっている日本ですからこれから16強は当たり前の国になるはずです。文化とサッカーとの融合をもっともっと図り、本田選手が心からそう思っていたように、世界一を目指しましょう。
われわれ指導者は、分析・解析・研究そしてトレーニングに落とし込む「教授(professor)」でなければいけません。と同時に夢を持ちサッカーの素晴らしさを全身で伝えられる人間でいたいものですね。

寝不足になりながらも学ぶことの多いワールドカップが最終章に向かっている。