福田教授の総回診【第19回】高校サッカーが世界をリード ~第 98 回の高校選手権に思う~

選手権で優勝した静岡学園をはじめ、青森山田、帝京長岡など質の高いサッカーを表現できる選手やチーム関係者には賛辞しかない。そのことを大前提としながらも身勝手な回診をしたい。

現在の日本サッカー界はリーグ戦文化の醸成が図られ、Jをはじめ各世代においてはリーグ戦でのタイトル争いが主であり、それに天皇杯などのトーナメントを冠大会としておいている。高校サッカーの世界ではプレミアリーグ・プリンスリーグ・都道府県リーグなどで、レベルの拮抗したチーム同士のリーグ戦によってサッカー界全体のレベルアップをはかっている。ヨーロッパを中心とする世界のサッカーに追いつくためにも、その試みは間違ってはいない。しかしながら、正月の高校選手権という民放とつながった舞台が花形すぎて、難しい育成を迫られている気がしてならない。

選手募集に関して、「あの学校はプレミアやプリンスにいる」というアピールは各都道府県1校しか参加できない「インハイ全国に出た」「選手権に出た」と同じくらいの重さになってきているため、降格するわけにはいかないのだ。今年、東西プレミア20チームのうち高校は6チーム、残り14チームはJユースである。高円宮U-18でクラブユースチームは大会を終了するのに対し、高校サッカー部は選手権もある。大津・東福岡・流通経済大柏のプレミア4チームは県予選すら突破できなかった(千葉県は仕方ないが)。そして尚志も市立船橋も初戦でPK負けしてしまった。青森山田を含むこの6チームは、プレミアでの試合のために、アウェイゲームでの移動日がつぶれ、他チームと比較してもフィジカル面のコンディション強化は難しかったのだろう。

今大会通じて尚志も市立船橋も青森山田も含めて80分(特に山田は決勝の 90 分)で運動量が相手チームに勝っていたとは思えない。ここ一番の戦いを挑んでくる他県代表のチームに粘られた結果の敗戦だったのであろう。もちろん、格上校で心の隙があったのかもしれないし、打ち破った高校が強かったこともあるので、何を分析したところで、「勝ったチームが強い」ことは否定しない。しかしリーグ戦との兼ね合いが高校生に与える、心理的、精神的、フィジカル的影響は確実にある。上位校の指導者は毎年、新種の苦悩がある。

そこで提言。やはり、プレミアのチームは都道府県予選を免除するのが一番であろう。プリンスはどうする?と言いたくなるところだが、ここは様子見。大会参加校が毎年変わってしまうので、大会運営側としては非常に頭を悩ますが、準備期間は約 1 年あるので不可能ではないだろう。前年度優勝都道府県をシードしない代わりに、プレミア参加校とインターハイ上位都道府県をシードする。プレミア参加校が都道府県予選に降りてこないとなれば、プレミア所属の地元有力校を応援する機運も高まるであろうし、何よりもプレミア参加チームのコンディション作りは少しばかりではあるがゆとりが出る。

セットプレーを磨くことは重要な勝利へのポイント

次にセットプレーの話。特に青森山田・(立正大湘南など)のセットプレーは勉強になる。アーリークロスのFKからの得点は本当に無晴らしい。そしてロングスロー。スローインもセットプレーの一つ。当然そこを磨くことは重要な勝利へのポイントであるので、ロングスローアーという切り札を用意しておくことで決して損をすることはない。ソフトバンクホークスの周東選手で考えれば否定的な意見は出ないであろう。文句(愚痴)を言う前に当然、相手チームが強烈なセットプレーを武器にしているなら、CKやファールによるFKを与えないようなサッカーをすればよい。ロングスローを与えたくなければむやみなクリアーしなければよい、となる。だから、静岡学園や昌平、帝京長岡は勝ち上がれた。

青森山田は、1点を追いかけるチームが打つ作戦としては至極興奮する戦いを見せてくれた。育成年代のサッカーとしてはどうなのか、W杯でこれをやってくるチームはあるのか、王者がこのサッカーを武器にしてカッコ悪くないか、いろいろな意見は出ると思うが、ルールの中で勝利を目指す中で各チームが工夫して戦術を組むことの面白さからすると、否定的な声をあげることに価値を見出すことは難しい。ロングスローに対して、助走してジャンプしロングスローのチャージを狙うチームがあった。FKで壁がジャンプするので、その下の隙間を狙うキッカー対策に、ジャンプする直前に助走して壁の下にスライディングして寝そべる壁を用意するなど新しい対策を講じるチームもある。ルール改正で戦術も変わるように新しい攻撃には新しい守備が生まれる。サッカーの研究・勉強は絶えず行われ、進化し、時には回帰する。実績で先を行くチームは常に研究材料とされ、対策によって封じられる。ルールの死角や盲点を突くようなプレーや現象はこれからも起こる。勉強し、研究を怠らない名監督の多い高校サッカー。青森山田や静岡学園だけでなく、日本の高校サッカーが世界のサッカーの潮流を生む可能性を私は十分秘めていると感じた。10年前、元中学校教師で日本代表のユース年代を指導した経験もお持ちになる吉武博文さんが講演会で言っていた言葉、「今にサッカーはバスケットのようにプレーされる日が来る。」夢ではなさそうだ。

最後にもう一つ付け加えれば、この年代の決勝戦で 56000人もの観客があり、どの試合も高校ならではの熱い応援があるこの大会は世界ではないであろう。Jユース大会や中学年代の大会も女子サッカーもこの部分を何とか出来ないものだろうか。表現こそ適切とは言い難いが、国のため、母校のため、仲間のため、愛する人々のために体を投げ出すスポーツシーンは我々に勇気と感動を与えてくれる。ラグビーW杯がそうであったように。だからこそ人は応援する。高校選手権から学ぶべき点が多いことは間違いない。だからこそ、高校選手権も進化を止めてはならない。監督資格、開催日程、出場校枠、外国人枠、留学生の扱い・・・。数年後この大会から世界に飛び出していく高校生がどんどん出ていくことだろう。