福田教授の総回診【第17回】相乗効果を与えるいい習慣こそ、最高難度の技術。~拝啓 チーム三郷へ~

卒業式シーズンとなりました。歳を重ねる度に涙腺が弱まる私は、ほんの少しの事で、泣けてくる。「旅立ちの日」とか「手紙~拝啓15の君へ~」などの合唱など聴いた時にはまずやばい。
合唱・オーケストラ・和太鼓演舞などは、一人ひとりの力を合わせることによって、素晴らしいパワーを発揮します。聴くものはすい込まれます。演技者たちも一人で成し遂げたものとは、比べものにならないほどの達成感を味わっているはずです。
ダンス大会など見ても、演技後、発表者達が抱き合って涙を流しているシーンをよく見ます。個人個人が持つ力(想い)を結集することにより、単純足し算以上の力を生み出すことって感動です。
それを相乗効果というなら、そいつは感動を生み、人間を豊かにします。スポーツの世界でも同様です。バレーボールのラリー、先日の高校サッカー選手権の東福岡の直接 FK など、グループ一体となったプレーはもはや芸術の域です。どれだけチームとして努力を積み重ねてきたのかが想像できて、なおさら「スゲー」ってなります。

我がチームも 20 年目、今までも選手達が多くの感動を与えてくれました。私は、歴史を振り返り、たまに「三郷 Jr Youth FC 好ゲーム BEST5」とか「三郷 Jr Youth FC 歴代 BEST11」を回顧します(じじい ですかね?)。
記憶に残るような試合を思い返してみると、県で優勝したり、関東大会を決めたり、昇格を果たした試合などが出てくることが多いのですが、感動がよみがえるくらい、記憶に残っている試合は、格上の相手にチーム力を結集し、チーム一丸で全力を出し切れた試合です。全員の気持ちと集中がいい方向に継続し、決勝点が生まれた時、タイムアップのホイッスルが鳴ったとき、決してお金では買うことの出来ない感動があります。
スタッフが抱き合って泣いてしまうような・・・。負けた試合でもそんな感動はありました。

相乗効果を(意図的に)生むためには重要なことが3つあると考えます。
1つめは、「達成困難な目標を持っている」と言うことです。サッカーにおいても、強くて、勝てそうもないチームや選手が相手にいてこそのモチベーションです。テニスなどシングルス戦でも壮絶なラリーを展開し、素晴らしいプレーでポイントを奪われた時に、納得してラケットをたたき相手を褒め称えるシーンを見ます。いい絵ですよね。スポーツ競技においては、相手の存在も相乗効果につながることが良くわかります。
格上のチームとの公式戦の時、またそこに勝たないと目標が達成できないとき、実は指導者もかなりの努力をします。ベンチワークはもちろん、円陣、ウォーミングアップ、ハーフタイムの指示、その試合に向けた応援体制、信仰心も薄いのに神社でお祈りして、お守りを買う などなど、勝たせたい一心で(ある程度神頼み的な要素もありますが)多くの準備をします。
そこに選手や保護者などもうまく作用して一丸となって勝利を掴んだとき、選手・スタッフ・保護者にも達成感があります。

ここで言えることは、その試合で発揮された相乗効果は、咄嗟のものでは決してないということです。勝とうとする選手の強い気持ち、スタメン以外の選手の一緒に戦おうとする気持ち、勝たせてあげたいと思う指導者、保護者の気持ち、それらをつなぐのに長い時間と、よいコミュニケーションも不可欠です。
よって相乗効果による「感動や達成感は、結果(試合)にあるのではなく、よいプロセス(目標とそこに向かうトレーニング)に宿っている」と言えるでしょう。

2つめに重要なのは、「皆それぞれが明確な個性を持っている」ことです。そして、その違う個性をお互いに理解し、認め合うということです。調和(ハーモニー)という言葉も相乗効果と同じです。
サッカーにおいてもそれぞれの個性が適材適所で生かされ、またそれぞれの選手達が使命感・責任感を自覚し、勝利に向かってプレーしている時は、素晴らしい試合となります。
相乗効果は勝敗に大きく影響します。各個人がしっかりと役割を持ち、持っている個性をうまく組み合わせることで大きな力を発揮します。こちらも咄嗟のものではなく、日々のプロセスなくしては得られないでしょう。

3つめに重要なことは、「選手を取り囲む環境が相乗効果を発揮する」ことを、選手達もそうですが、スタッフも保護者ですらもが理解し、感謝の気持ちを持てているかと言うことです(これらの事を、強制力を持って意図的に理解させることに賛否はあるかもしれません)。
サッカーでは選手の他にコーチがいて、協力する家族がいて、応援する人がいて、コートや会場を設営したり整備したりする人もいます。選手達の力だけでは人工芝やいい天然芝、時にサッカースタジアムで試合をすることは出来ません。審判団も必要で、また、戦う相手の選手がいるからこそ、さらにうまくなろうとする気持ちが生まれます。

上記のことにみんなが気づいて、いや実感してという言葉が正しいでしょうか。感謝の気持ちを忘れず、いや常に内在させ、普段の取り組みを大事にしていけば、どれほどの(相乗)効果があらわれることでしょう。
育成年代では「個の育成(個人技術)」は絶対的に優先順位の高い課題です。しかしながら、その言葉ばかりが一人歩きしてはいけません。取り囲む環境あっての「個の成長」です。感謝の気持ちを持てない「個の能力の極めて高い人間」が人生の成功者(勝利者)となるケースは稀有なものです。
社会の中で周囲に好影響(相乗効果)を与えられる人間になるよう育成することをベースとしながら、個(個性)の成長を導くよう育成しなければならないと思います。周囲のサポートがあって個人技術は生かされるのですから。

さあ、皆さんで成長していきましょう!その取り組みは限定的なものではいけません。習慣化してこそのものです。
ナサニエルの言葉を借りれば、「よい習慣を身につけることは“最高の召使い”を雇うこととなり、それは人生における成功の獲得を手助けする。しかし、悪い習慣を身につけることは“最悪の主人”に雇われること」となり、よい習慣と逆の結果を招きます。
結論!!「いい習慣を身に付けた仲間・環境に囲まれていると相乗効果が生まれます。」「悪い習慣を身に付けた仲間や大人といると、どんなにいい選手達が多くいても、多くの物事を壊してしまったり、足を引っ張ったりします。

三郷 Jr Youth FC はエリート集団と言えますが学力やサッカーだけがエリートではではいけません。相乗効果を生む力を持てるエリート集団でありたいものです。その環境を作るのが選手を取り囲む大人の責務です。「いい国がいい国民を作る。いいチームがいい選手を作る。」当然のことです。
イタリア(ローマ)に行き、街を観光していたら、サインを求められて、片手に紙、片手にペンを持たされている間に、お金を取られそうになりました。多くの環境客がその手口で金品を抜かれていました。
「「真実の口」に手を入れている所を写真に撮ってあげるよ」と言って、写真を撮ってもらった女子大生が金品を要求されていました。フランスでは妙に空いている地下鉄に乗ったらギターを弾き、歌う黒人がいました。ビートルズの曲を演奏し、ギター好きな私はスマイルを浮かべて聞き入っていました。駅降りるときにドアをふさがれて、金を要求されました。(怖かったので当時の通貨で20フラン払いました。)
ブラジル遠征の最終日、マラカナンスタジアム見学のため、契約観光バスに荷物を残したまま見学に向かったら、帰りにはバスがありません。運転手がそれを奪う目的で、バスごと逃げたのです。
ドイツ3部リーグに属する小規模な町のチームの練習グランドでは選手がシュートミスしたボールを小さい子どもは持ち逃げしました。私が追いかけて捕まえると、神の「おぼし召し」だと言って返そうともしませんでした。「だって落ちていたじゃないか」と。

先日、中国人の観光ツアーの運転手をしたバス会社の人と話しをしました。「発狂したくなるくらいうるさくて運転にまで影響した。ガイドの全く話も聞かないから、当然時間も守らない。銀座の中央通り沿いでは長い時間停車できないから時間まで巡回して時間で戻ってきているのに・・・。」
中国人観光客を受け入れたホテルの支配人と話す機会がありました。「消火器までも・・・備え付けのアメニティはほとんど無くなった。食事では雅な食器もジャンバーのポケットに入れていた。」その国の全ての国民がそうであるはずも無いけど、そういう人によって国が悪く思われてしまう。

三郷はいい習慣といい環境がいい選手をより良くする。でも真面目すぎても相手を騙せないのですよ。
「マリーシア(ポルトガル語で「ずるい」の意)」のかけらもない。いい奴すぎにも困ります。サッカー競技における技術的・対人的に「いい習慣」をしっかり身に付けさせないと・・・。お人好しな国民と映っているのでしょう。
いい習慣を身に付けながらも国際感覚も経験させないとですね。

【三郷 Jr Youth FC というチームでの良い習慣のすすめ】
1 常にみんなの目標を共有し、どんなときでも、その目標に努力する習慣
2 前向きに行く習慣(仲間の悪口や文句を言わない、活動中マイナスな発言はしない)
3 拾う・汲み取る習慣(ルーズボール(こぼれ球)・ピッチ外に出たボール・落ちているゴミ・人の
心、親の想い、スタッフの想い)
4 相手にたいして 状況や、立場を考えて挨拶をする習慣
5 練習前に次の日の学校の準備を終える習慣
6 人の話を100%聞くことの習慣化(三郷 Jr Youth FC 6箇条の1つ)
7 荷物・用具・グランドを大事にする。美しく揃える・並べることの習慣化 (三郷 Jr Youth FC 6
箇条の1つ)
→ 活動に来れば常に相乗効果を感じ、成長を実感出来るチームになろう。
→ 目標に近づこう。 夢は見るものでは無く叶えるものなんだ。
→ 一人の力では難しくても、選手全員の力で。
→ 感謝を込めて、一人でも多くの人を感動させようぜ。

やろうぜ!行こうぜ!その舞台が君たちにはある。