福田教授の総回診【第4回】キャプテンたる選手と育成年代の指導者のリーダーシップ

私はサッカーの指導者として高校を9年間、中学のクラブを12年間つとめてきた。選手としても中学、高校と主将を務めさせていただいたので、リーダーシップを問われることが多かった。
良き指導者とは?良きリーダーとは?ということを年柄年中考えさせられてきた。
高校時代、私は自身を素晴らしい主将だったとは全く思っていないが、センターバックというポジション柄、ピッチでのリーダーは私であったと思っている。その思いは大学サッカーでも同じだった。
当時オフサイドのルールが「相手プレーヤーの関与」より「オフサイドエリアの相手プレーヤーの存在」が適用対象であったから私の判断と指令でゲームをコントロール出来たし、GKとの連携で時間も操ることが出来た。
またオフサイドでもらったFKを蹴る仕事が多く、セットプレーのキッカーとしての重要ポストも私にあった。私は「失点したくない」その一点においては妥協を許さない非常な男だった。
中盤への厳しい要求は今思えば中盤の選手の自由な発想も奪い、守備的なプレーに終始させてしまったのではないか反省もしている。マーキングの指示、守備の優先順位の指示、ライン押し上げの指示、セカンドボールに対する読みの要求とポジショニングの修正、攻守の切り替えの要求。
DFがオーバーラップするときの危機管理、私は仲間の怠慢は許さなかったし、私自身の集中を切らしたことの記憶が少ない。私はまさにディフェンダー(守備者)だった。おかげで高校の指導者として今まで作ってきたチームは守備的なチームが多かったような気がする。自分のプレーヤーとしての財産を還元しただけだったのかもしれない。

教員を目指していた私はたくさんリーダー論的書物を好んで読んだ。キャプテンにふさわしい人材について、ある高校野球の監督が書いた書物の中にキャプテンになれる選手のキーワードが書いてあった。

①全体を見る力
②冷静さ
③分析力
④説得力(言(論理的である)動(プレゼンテーション)ともに)
⑤前向きな気持ち(積極性)
⑥仲間を鼓舞できること
⑦自分に自信があること

歴代私が見てきたチームでキャプテンのポジションを調べてみた。以下の通りである。
<GK3人・センターバック6人・サイドバック6人・ボランチ6人・FW2人>

まず上記の①から⑦をピッチ上で表現できるとするとやはりGKかセンターバックが良いような気がする。逆に言えば、①から⑦の資質がある選手をGKかセンターバックにするのが良いのかもしれない。しかしGKやセンターバックは身長が大きいことが適性となるので、背の大きくなければサイドバックになるのか。Jリーグや日本代表では年齢は重要だが川口・宮本・中澤はポジション的にも適格かもしれない。まあカズや中田のようなカリスマもいましたがやはりボランチかTOPかで、私の指導したチームのデーターからも外れてはいません。

私の指導人生の中で歴代のキャプテン達は7つの項目の多くに優れたものがあった。しかしそれは最初から備わっていたとは言えない。キャプテンを経験したことで備わったものもある。
また後述するが私が指導しているこの年代は育成年代である。「鶏が先か卵が先か」ではないが、実は上記の要素は全て備わっている必要はなく、キャプテンになった自覚が育ててくれるものも多い。
スポーツチームでも、会社組織であってもそれは同じで、上に立ったことで上記の要素の必要性を感じ、そして「責任」を持たせられることで自覚する。よって私は育成年代のキャプテンとしては⑤と⑥の他に「責任感の強い選手」であれば誰でもが適任と考えているし、中学1、2年生のうちは多くの選手に、期間付きその年代のキャプテンをさせて一定の「責任」を持たせることが必要であると思っている。

話は逸れるかもしれないが、「責任」を持たせされると言うことは人間の成長にとって、またリーダーシップを育てるという意味でとても重要である(「責任」の重圧に負けてしまう人もいるため、責任の付与者の責任も大きいが)。「任されたという自覚」を与えさせることが的確に出来る指導者もまた良いリーダーと言えるのだろう。
リーダーがカリスマ的であればあるほど、次のリーダーが育たない面もあるが、失敗を予想しながらも責任を与え、その失敗の責任は自分が全て負う。そして失敗を許すという器の大きさもまたリーダー的資質なのだ。
私はリーダーの類型を見ようというのではないので、長嶋茂雄と野村克也・トルシエとジーコと言ったわかりやすいタイプのリーダーの比較を論じてその甲乙を付けるつもりはない。またオバマとブッシュを比較するつもりもない。結果が出なければ責任を取らせらせるのがプロの世界なので、その時その時の結果が当然のことながら評価される。
目先のことだけでなく将来の育成も考えてのリーダーシップを世論は構築しないという「現実のつらさ」がありますから。もはや誰もが覚悟している消費税値上げのことすら堂々と公言できないのですから・・・。

私が過去に学んだ多くのリーダー論は、結果重視(生活や会社経営に直結するのだから当然)の大人社会の理論であったのではないか、最近は少し考えが変わってきた。今回のタイトルで私が言いたいのは教育・育成年代のリーダー(監督・教師・キャプテンなど)についてです。育成年代のリーダーに求められること、それは、

①「信じること・待つこと・許すこと」
選手達の成長を信じて待つこと。許さない空気を与えつつ許してまた信じ、待つこと。
失敗を次につなげる前向きな指導が出来ることです。裏切られても信じていけるかということです。

②「選手をしっかり叱れること」
何が駄目なのかを教える責任があります。躾(しつけ)は信じて待ってばかりはいられません。
叱らなければならない場面で叱らずにいることは怠慢です。叱るタイミングや場所や言い方については別の機会でお話したいと思いますが・・・。

「家庭」もまた育成年代「チーム」と言え、そこでの「リーダー」は保護者でしょう。各家庭では「信じ待ち許す」「しっかり叱る」は構成メンバーの性質とおかれた立場からスタイルこそ違えども当然のことのように実行されていなければいけないことだと思います。

われわれチームのスタッフも『三郷ジュニアユース「ファミリー」(選手・父母会・コーチ陣)』の一員としてこの大切な育成年代の選手達を守るリーダーでいたいですね。育成年代は学校・地域社会・課外活動の指導者・そして取り巻く環境や大人その全てがよき「リーダー」でなければなりません。「READER」=<導く人>です。選手達の「成長力(敢えて私は成長パワーと呼びたい)」はわれわれ大人には持てない凄いパワーなのです。そいつを引き出し、一緒になってその成長を見つけ喜び合いましょう。

チームはマナーアッププロジェクトを2年間遂行し、今年度からは新に学力向上プログラムをスタートさせます。選手達が自信を持った人生を歩み、将来家庭や社会のリーダーとなるために「自信」と「責任感」を育めるようにサポートします。
【みんながリーダー】的資質を持ったら凄いチームになりますね。また日本を代表するサッカー選手を育成したいものです。何度も父母会でお伝えしているようにベースは「心」なのです。

選手の成長を色々な面から見つめ導く良きリーダーが存在する環境作り

だから三郷ジュニアユースそれが三郷ジュニアユース

リーダーの類型と求められる三大資質
①統帥型:
カリスマ性(統率力)、判断力(決断力)、創造性、人間性(包容力)、人物鑑定力

②参謀型:
問題発見能力(情報収集能力、情報分析能力、情報整理能力、判断力、想像力、思考力、直感力)、問題解決力(情報力、直観力、企画力、表現力、決断力、実行力)、創造力

③指揮官型:
問題解決能力、統率力、判断力、人間性

統率力とは?
○リーダーの必須能力
○志の無い人間に統率力は育たない。達成すべき理念と目標を持て。
○正しい目標に邁進する人間は、追随者を得る。
○困難な目標を達成するためには、問題発見・解決能力、決断力、指導力などが必要。
○問題が困難になるほど、リーダーの人間性が必要。

決断力とは?
○リーダーは決断するために存在する。決断できないトップは不要。
○決断力は、記憶力や思考力とは平行しない。失敗を恐れない勇気が必要。
○勇気を引き出すために高い志が必要。理想を持って生きよ。
○私欲が正しい決断を妨げる。無私の精神がリーダーシップ能力を高める。

先見性(時代の流れを読む能力)とは?
○リーダーの必須能力。
○先の見えないリーダーには部下はついてこない。
○百歩先を見るものは狂人扱いを受け、現状のみ見るものは落伍(脱落)する。十歩先を見るもののみが成功する。

人間性とは?
○部下の信頼無くして大きな仕事はできない。
○人間性の低いトップに部下は心服しない。
○リーダーの立場にたって考える習慣をつけること。それによって協力者が得られる。
○人のできないことを率先実行すること。利得は最後に受け取ること。
○自分のできないことを部下に押し付けないこと。

人物鑑定力とは?
○一人では大きな仕事はできない。
○人材発掘能力がリーダーには不可欠。
○適材適所の人材配置を心がけよ。
○部下に仕事させよ。任せることのできないリーダーは大きな仕事はできない。
○任せたことに責任を持て、部下に責任を転嫁するリーダーは部下に見捨てられる。
○後継者育成がリーダー最後の大事業。地位に執着するなかれ。

問題発見・解決能力とは?
○問題の発見がすべての出発点。目の見えない人間はリーダーになれない。
○狭い知識では問題発見が困難。幅広い知識の獲得に努めよ。
○問題の解決にも広い知識が必要。複数の視点をもつことにより解決策を立案できる。
○大きな問題の解決には幅広い情報の収集と人材の結集が必要。人脈形成に留意せよ。

想像力・創造力とは?
○想像力は創造力の基本。周囲への気配りにも必要。
○創造力の涵養(かんよう)には現実の寄与するが、自由な発想を妨げる。バランスの取れた知性の発現が必要。
○志を立てるとき、成果を正しく評価するとき、進行に基づく高い人間性が有効。
⇒涵養ー〔「涵」はひたす意〕水が自然にしみこむように、少しずつ養い育てること。「徳性を―する」

情報処理能力とは?
○情報を集めただけでは価値が低い。情報を処理して付加価値を付けること。
○重要な情報を選択し、情報に意味を与えること。
○情報に基づいて正しく評価し、業務の高度化に利用すること
○評価は対策の策定に利用されはじめて有意義となる。

説得力とは?
○部下の統率には、やるべきことを納得させる説得力が必要。
○プランの実現には、上司を納得させる説得力が必要。
○業務内容の正確な把握とそれを魅力的に伝える表現力が重要。
○論理的思考力とプレゼンテーション能力を磨くこと。

表現力とは?
○結論を明確に。結論を人に納得させることがプレゼンテーションの目的。必要があれば結論を先に示せ。
○重要なポイントを明示せよ。不要部分を切り落とし、メリハリの利いた話をせよ。
○資料に沿った話をせよ。わかりやすくするためにの工夫を心がけよ。
○素人に理解させることができれば一人前。

実行力とは?
○失敗を恐れるな。同じ失敗をしなければ良い。
○リーダーは前向きの姿勢が必要。問題に積極的に取り組むこと。
○積極面を見ることのできる人間がリーダーになる。消極面しか見えない人間が部下になる。
○リーダーには実行力が必要。何をなすべきかに留まらず、何ができるかを考えよ。

日々の仕事も大切ですが、たくさん本を読み、素晴らしい方の話を聞いてアウトプットすることは、リーダーとしてもっと大切でしょう。
「仕事は与えられるものではなく、自分で作り出すこと。自分で作り出し、会社に貢献することで、社会にも貢献できる。」
この定義が人間として、社会人としての存在意義だと思います。
感謝され、信頼され、必要とされる人は幸福な人生を送れるでしょう。
それを実践し、部下に伝え、人育てることのできるリーダーを目指しましょう。