福田教授の総回診【第24回】「胃がんリンパ節多発遠隔転移STAGE4・平均余命1年6ヶ月」③

「胃がんリンパ節多発遠隔転移STAGE4・平均余命1年6ヶ月」③

<目に見えない力>=「付加価値」の合計 

 4月に入り平均余命残り1年3ヶ月となった。

 実は私は大学で経済学部にいた。高校時代の恩師でサッカー部の副顧問だった阿部先生は早稲田の政経学部を出ており、私の目標であった。2年半前、私が幹事で母校サッカー部のOB会を開いた際、現役時代の恩師岡野先生・教育実習時の恩師、浜名先生・私のかけがえのない教員生活での恩師で三郷工業技術・三郷北高校でサッカーとともに過ごした村田先生(3人とも体育教師)も集まっていただいたが、阿部先生は闘病中で参加いただけなかった。親父の逝去で年賀状をご遠慮いただいた令和元年を過ごし、令和2年度には阿部先生の訃報が奥様からの喪中はがきでもたらされた。ショックだった。64歳の若さでのその訃報はそのまま、10年若い私に引き継がれようとしている。高校時代の政治経済の補習で「挫折がお前には必要だ」と厳しくおっしゃってくれたその言葉、浪人生や予備校生も混ざる大学模試の政治経済で1位を取ったとき、自慢げに話した私に、教員になるなら参考書くらい全て理解しろ!それでも難解な問題や時事で満点は難しい。そう言ってくれた阿部先生はもういない。横須賀の地に眠る阿部先生の墓前に早くいかなければ。

 私は強く誓いを立てた残りの人生の過ごし方を、選手への現場指導に軸足をおいた。4月、三郷北高校生との強化練習、ミーティング。関東大会予選での浦和東高校戦・武蔵越生高校戦での奇跡的勝利。ジュニアユースチームの県一部リーグ初戦勝利、日本クラブユース選手権での関東大会出場。多くの人に選手達が感動を与えてくれた。それぞれの勝利に奇跡的なものを感じ、福田の命の灯火がそこに見えない力を与えていると感じている人も少なからずいるように思う。それもあるのかもしれないが、強いてそこに論理的な要因を見いだすとしたらそれは、準備力という「付加価値」に尽きると断言する(総回診らしくなってきました)。

 私は経済学が好きである。その中でも「付加価値」という言葉に魅力を感じている。サービスの概念はまさに「付加価値」を如何に生み出すかに尽きる。日頃スタッフに言っていること、それは『仕事とは「付加価値」を生むことである』と。言われたことをしっかりやる。今までと同じ路線を継承する。それぞれ立派なことではあるが、自分しか出来ないことを今までの仕事に乗せることが必要で、アイデアを持ち、それを実行に移していけるエネルギーが大事なことなのだと。4月に入って私が選手に施したトレーニングメニューは全て、オリジナルのもので、事前にオーガナイズはもちろん、グルーピング・KEY FACTOR・OPTIONなども準備した。そして、最終目標から逆算した漸進性あるメニューはいずれも4時間以上かけて作ったものである。それを視覚的にスタッフと共有し、前日までに確認・共有しここまでやってきた。スタッフには前日までのメニュー理解を強制し、暇人と揶揄されるくらいの準備の徹底だったと思う。これは私の授業とも共通するポリシーである。「成功の99%は準備にある」そしてその準備こそが付加価値に他ならない。今だから言わせていただくが、サッカー部の生徒は授業中寝ますと教員に言われたり、陰口を言われたりしたことがある。自分の授業がつまらないからであると思わないのか不思議である。確かに準備を怠っても授業は出来るし、準備したところで全員をうならせる授業は滅多に出来ない。でもブラッシュアップする姿勢を持ち続けないといけないのだろう。私は30年間トレーニングメニューを授業以上に研究してきた。もはや準備などしなくても少しチームや選手を観ればどのトレーニングが必要かくらいはわかるつもりでいる。しかし、選手の個性や精神状態、天候やピッチ状況などは毎回違う。その都度そこまで、想いを巡らせてトレーニングを組むのが有効だと知れば、2時間のトレーニングメニューを組むのに4時間は至極当然の追求結果であろう。セットプレーのトレーニングなどは特にである。勝利のためにはやはり良い準備。選手達はその練習に充実感を感じ続ければ試合で勇気が持てる。私は今回の関わっているチームの大躍進はそこにあると思っている。

 これをGTP(GROSS TEAM PRODUCT)=チームとしての付加価値の合計と考える。父母会・フィールドテスト・サポーターの数・モチベーション映像作成・試合日誌添削などもGTPに含まれる。