福田教授の総回診【第8回】「FWの判断とずる賢さ」~表題を兼ね備えたFWの育成はできるのか~

FWの動き・・・これはドリル練習ではうまくいっても実戦(ゲーム形式)の練習では、なかなかドリルでやったことが表現できないよね。相手の位置、スペース、味方のボール保持の状況とも長い間味方がボールを支配(ポゼッション)してくれていれば、判断する時間を長く、また、たくさんとれるけど、攻守の切り替えが激しいと一瞬の判断が大事になりますね。
もともとMF陣は常にそのような判断力をつねに求められます。しかしFWは他のポジションに比べれば少しではあるけれど、止まって(体を)休めるときがあります(特に相手ボールの時)。そこで、大切にして欲しいことは「予測」です。いつどこでマイボールになるのか、そのときにどんなプレーが出来るのかを常にイメージし、そのときが来たら動き出しを早くしていくことです。
またFWは常にゴールを求められます。スピードが武器と言うよりもポストプレーが得意な選手でもボールをもらう優先順位は「ファーストタッチでシュートに行けるもらいかた」でしょう。「受ける」ことは重要なのですが、裏は取らない、シュートを打たないという優先順位を誤ったFWではスルーパスを通すいいMFも育ちませんし何よりもチームの勝つ確率は上がらないでしょう。時にはシュートを打つよりも前を向くことの方がいいプレーだったり、まずキープすることのほうがで「ため」がつくれたり、スペースを他に生み出せたりという効果はありますが、FWとしての最低限度の「もらいかた」の優先順位は局面や時間帯などの状況によって使い分けられる良い「判断」の出来るFWが求められます。

最終的にはFWは持って生まれた得点感覚であったり、人には教えられない何か(信じられないスピードだったり、大きさ・高さだったり、野性味であったり・・)をもったもののほうが向いているのだと言うことを私も否定はしません。ですがやっぱり、全国でベスト8を勝ち取るくらいのチームにはいいFWは不可欠です。繰り返しになりますが「一瞬の判断力」。このことが今の選手達にひいては日本の将来のために必要で、また磨かれるべきなのでしょう。

先日パラグアイ戦で香川選手が決勝ゴールをあげました。前方のスペースを見つけて判断よく動き出し、パーフェクトコントロールから、「GKとボールとゴール」素早く見て、狙い澄ませてシュートを決めました。素晴らしいゴールでした。このあたりがヨーロッパ(香川選手の場合はドイツ・ドルトムント)で磨かれた(オフザピッチでの判断を含めた)判断力向上の証明なのかもしれません。松井選手や本田選手も海外リーグでの経験に裏打ちされた一瞬の良い判断のプレーが増えています。しかしFWの良い判断も良い判断のDFにかかってはうまくいかないのです。真面目一本、馬鹿正直の良い判断は対人競技ではうまくいかないことが多くなります。ラテン(ポルトガル語など)の言葉で「マリーシア」という言葉が日本人に欠けているものとして紹介されてきましたよね。「ずる賢さ」という意味でしょう。八百屋のリンゴを隙見て盗み、走り去るような能力ことと勘違いされますが、私は日頃の人との競争やコミュニケーションの中から感じ取り、嗅ぎ取るものが多分に含まれるのではないかと思っています。とにかく人を介しての用語が「ずる賢さ」ですから・・・。
要はオフの環境なのです。JVILLAGEのエリート達がどうこのあたりを育ててもらったか、楽しみです。