第2回 高野 凌平 「伝えたいこと・大切なもの」

『伝えたいこと・大切なもの』
髙野 凌平

「ゼロ以上のチームに」
サッカーのプレーは全てのことが自分1人ではできない。シュート場面にしても、無失点試合にしても、他の人の労作によってできたものだ。(おとりや声での相手の引き付け等も含まれる)そのかわり、自分も何らかの労作を仲間に与えて試合が成り立っている。つまりチームワークとは労作の交換なのかもしれない。この労作を交換しない、もらうばかりで与えるものがないというのではチームはきっと機能しないはず….。これは個人にとってもチームにとってもマイナスである。
承知の通り、サッカーはミスのスポーツである。だからこそ、誰かのミスはチームでとりかえそう。そしてミスをした選手を励まそう。ミスをした選手は励ましてくれる仲間の為に次に出来る事を一生懸命に取り組もう。仲間の為に。プラスとマイナスがゼロ以上でなければ強いチーム、良いチーム、良い選手とは言えないのかもしれない…

 ジュニアユース時代に私は多くの事を学んだ。まずは、サッカー面。多くの技術や戦術を学び、サッカーに対する見方が変わった。サッカーの奥深さを知り、サッカーの楽しさや魅力を大きく感じる事ができた。そして、マナーアップ(挨拶、話の聴き方、荷物の置き方などの礼儀)やサッカーに対する取り組み方、物事に対する考え方など、サッカープレーヤーである前に1人の人間としての成長をなくして、サッカープレーヤーとしての成長は有り得ないという事を学んだ。しかし、私が学んだ中で一番大切なもの。それは、『仲間の大切さ』である。

「仲間は偉大である。」人生には、楽しい事ばかりではなく、辛い事や逃げ出したくなる困難が多く待ち受けている。しかし、大切な仲間と共に味わう喜びや辛い出来事は1人で抱え込むものとは大きく異なる。『仲間』というものは、喜びを大きくさせ、辛い出来事を小さくさせる力を持っている。その仲間の数や想いや繋がりが大きければ大きいほど喜びは大きくなり、辛い出来事は小さくなる。辛い練習だって、大切な仲間達と一緒なら乗り越えることができる。私が選手であったジュニアユース時代、公式戦前になると仲間達と「明日絶対勝とうな」「俺が一点決めるから任せとけ」などの一斉メールを送り合っていた事。前半で交代となってしまった1人の仲間が、後半開始前に悔しさを押し殺しながら、「凌平、俺の分まで頼むよ」と言ってくれた事。朝練が待ち遠しすぎて、朝4時頃からグランドでボールを蹴った事。オフの期間もジュニアユースのみんなと遊んでいた事など、数えきれない仲間との思い出が、今でも鮮明によみがえる。3年間で大きく成長する事が出来たのも忘れられない思い出がたくさん出来たのも、この「大切な仲間達」がいたからだと胸を張っていう事ができる。そして、卒会から10年経った今でも繋がりは絶えず、定期的に飲み会を開いては、思い出話をしたり、今の悩みや愚痴を言い合ったりすることのできる、かけがえのない仲間達である。

「偉くなるな!!」
このようなチームをよく見かける。いわゆるスタメンである選手がベンチの選手をこき使い、スタメンとそうでない選手達の間に権力や溝が発生しているケースである。人は少し満たされると自分が上になってしまう生き物である。いつも高いところにいると地面の一番低い所にある小さな花に気づかなくなってしまう。いつも、高速で走っていると、道端のほんのちょっとした落し物や大切な物を見落としてしまう。雑草が輝きを放っている事もたくさんあるのに。一つの哲学・・・地球上で一番必要な存在は水です。水は必ず高い所から低い所へ流れるんです。故に一番大事なものは海なんです。地球儀を回してみてください。圧倒的に海の面積が広いんです。低くなれ。流れる全てを受け入れられる海のような心を持てる人を目指して。

全ての選手にチャンスがある。「仲間を大切にする」というチームワークは私が選手時代も、そして指導者となった今も、最も大切にしているものである。ただし、世の中は全て平等ではない・・・そんな、世の中に立ち向かっていく精神もこの三郷ジュニアユースで身に付けて欲しい。努力しても叶わないスタメン出場、そんな時も『大切な仲間達』とやるサッカーが楽しいからこそ、前を向いて努力し、本気で仲間をベンチやはたまたベンチ外からでも応援する事が出来る。Jユースに入りたい、強豪校にスカウトされたいからアピールをしたいという気持ちももちろん大切であるが、それよりもこの『大切な仲間達』と勝って喜びを分かち合いたい。と感じる事のできる集団を、仲間の為を想える集団を、その為の毎日を選手達と一緒に築いていきたい。

今の私にできること。それは、選手達と共に成長をしながら、ジュニアユースで学んだ大切なものを預かった大切な選手達に伝えていくこと(もちろん、サッカー面も含めてです)。コーチはかなりの負けず嫌い。ジュニアユースの良き伝統に更なる磨きをかけるべく、熱意を持って本気で選手達と関わっていきたい。10期生や私が指導者として関わらせてもらった16期生、18期生、21期生のように卒会をしてからも決して途絶えることのない一生の仲間(ファミリー)を目指して。

『 サッカーボールは 仲間を作る!! 』
『繋ぐ〜next stage〜』一体感